ジャーナル
平皿におかずを盛り付けるのも素敵ですが、日々の慌ただしい食事作りにおいて、もっとも頼りになるのは「深さのあるうつわ」かもしれません。 ざっくりと和えたサラダ、汁気の多い煮物、あるいは、手早く済ませたいお昼の麺類や丼もの。 深さのある「鉢」や「ボウル」は、料理の形を選ばず、少々おおざっぱに盛り付けてもすっと受け止めてくれる独特の懐の深さがあります。 本日は、毎日の食卓に欠かせない万能な道具として、サイズごとに異なる「鉢・ボウル」の魅力と選び方をご紹介します。 ■ 食卓に細やかな気配りを作る、豆鉢・小鉢 ほんのひとくち分のお漬物や、夕飯の残り物の和え物。小さな鉢は、ちょっとした副菜をよそうのに欠かせない存在です。 お醤油や薬味を入れたり、お茶請けの小さなお菓子をのせたりと、食卓のあちこちで小回りの利く働きをしてくれます。メインの平皿の傍らにそっと添えるだけで、食卓に丁寧な気配が生まれます。 ■ 毎日のメインおかずを受け止める、中鉢・大鉢 家族分のサラダや、ゴロゴロとした野菜の煮物。汁気のあるおかずをたっぷりと盛り付けるなら、しっかりとした深さのある中鉢や大鉢の出番です。 うつわの縁が立ち上がっていることで、盛り付けたときに料理が自然と中央に寄り、ふんわりと立体的で美味しそうに見えるという嬉しい魅力もあります。 ■ ひとりの日もお腹を満たす、おおらかな丼鉢 「今日はもう、うどんでいいや」という日。 そんなとき、作家の手が残した確かな重みのある丼鉢を使うと、「手抜き」が「うれしいごはん」にすり替わる感覚があります。たっぷりのお出汁を張ったお蕎麦や、ほかほかの丼もの。両手でしっかりと包み込んだときの安定感が、お腹だけでなく、日々の疲れまで静かに満たしてくれます。 うつわの「深さ」とは、料理をする人にとっての安心感そのものです。 汁気がこぼれないか気をもむこともなく、ただそこにおかずを滑り込ませれば、うつわの壁が料理をきれいに立ち上がらせてくれる。 手のひらに収まる豆鉢から、両手で抱える丼まで。 ぜひ、ページ下部に並んだうつわたちのなかから、今の暮らしに一番ほしかった「深さ」を見つけてみてください。...
雨が続く季節は、食卓の色合いがふと気分を左右することがあります。じめじめした空気の中でも、器のトーンを少し意識するだけで、食事の場がすっと整う感覚。雨の多いこの時期こそ、お天気に合わせた「うつわ選び」を楽しんでみると面白いものです。 ■ 涼しさを出したい日は、すっきりとした「白」や「青」を すっきりとした白磁や染付の藍、あるいは、ほんのりと淡い青みを帯びたうつわ。こうした涼やかなトーンの器は、どんな料理の色もきれいに受け止め、食欲を自然に誘ってくれる頼もしい存在です。 お刺身のほんのりとしたピンクや、よく冷やしたトマトの赤。 白や青のうつわに盛ると、みずみずしい素材の色がいっそう際立って見えます。 ■ 肌寒い日には、陶器の温かみを 一方で、しとしとと雨が降る肌寒い日には、ざっくりとした土の質感を持つ「陶器」が食卓に温もりを運んでくれます。 釉薬の穏やかな揺らぎや、両手で包んだときに伝わる土の重み。温かいスープや煮物をよそうと、湯気まで美味しそうに見えてくるから不思議です。同じ料理でも、器が変わるだけで「涼」を感じたり「温」を感じたりと、味わいの印象まで少し変わる気がします。 「すっきり涼みたい日は白や青、ほっと落ち着きたい日は土もの」 そんなふうに、その日の空気や気分に耳を澄ませて選んでみるだけで、いつもの食卓が季節に寄り添った心地よいものになっていきます。特別な料理でなくても、器ひとつで食事の時間が少し豊かになる。梅雨の食卓を、器で楽しんでみてください。 食卓が、心地よいものでありますように。 うつわ御結
毎日、当たり前のように手にする「湯呑み」や「汲み出し」。 お茶を飲むという日常のささやかな時間にこそ、作家ものの器を迎えてみてはいかがでしょうか。 唇に触れる縁の感触や、両手で包み込んだときの土の温もり。少しの気配りが、いつものお茶の時間をぐっと豊かなものに変えてくれます。 ■ 手に馴染む心地よさ 作家が一つひとつ手仕事で手がける湯呑みは、同じように見えてもわずかに形や重さ、手触りが異なります。 ろくろの跡が指先に優しく添うものや、ふっくらとした丸みが手のひらにすっと収まるもの。土の力強さを感じる陶器から、すっきりと端正な磁器まで、自分の手に一番しっくりと馴染むものを選ぶ時間は、とても楽しいひとときです。 直接手で包み込み、口をつける器だからこそ、量産品にはない「人の手の気配」が心地よい安心感を与えてくれます。 ■ 土ものと磁器、それぞれの佇まい 日常使いの器は、素材によってもお茶の時間の愉しみ方が異なります。 土の温もりを感じる「陶器(土もの)」は、ともに時間を過ごすことで景色が育っていくのが大きな魅力です。お茶を淹れるたびに、釉薬の表面にできる「貫入(かんにゅう)」へ穏やかにお茶の色が馴染んだり、使い込むほどにしっとりとした手触りへと変化していきます。目止めなどの最初の手間も、自分だけの器へと育てていく大切な時間です。 一方で、すっきりと端正な「磁器」の湯呑みには、陶器とはまた違う静かな魅力があります。つるりとした心地よい口当たりや、淹れたお茶の水色(すいしょく)をパッと鮮やかに引き立ててくれること。そして、作家ものの磁器だからこそ感じられる、ただ真っ白なだけではない手仕事の柔らかな揺らぎが、いつもの食卓に凛とした空気を運んでくれます。 一息つくための、大切な相棒のような存在。 ぜひ、毎日の暮らしに静かに寄り添ってくれる、お気に入りの一客を見つけてみてください。 うつわ御結
佐賀県伊万里市に窯を構える「文祥窯(ぶんしょうがま)」。 その三代目である馬場光二郎(ばば こうじろう)さんの手がける器をご紹介します。 近年、さらに多彩な技法で表現の幅を広げられている馬場さんですが、今回「うつわ御結」が皆さまの日常にお届けしたいのは、私たちの定番としてセレクトしている「白磁」と「染付」の器です。 ■ 泉山の石から土を育てる、三代目の仕事 文祥窯の器は、精製された既製の粘土を使うのではなく、有田焼の原点である「泉山磁石場」などから、馬場さん自らが陶石を採掘して作られているそうです。 掘り出した硬い石を砕き、水に晒し、時間をかけて一本の粘土へと育て上げる。 その気の遠くなるような土作りの後も、さらなる手間と時間がかけられています。 成形し、絵付けを施した器たちは、昔ながらの薪窯(登り窯)で焼き上げられます。 一度火を入れれば、1300度近い高温に達するまで、昼夜を問わず数十時間も不眠不休で薪をくべ続けなければならないのだとか。炎の動きや窯の温度変化から片時も目を離せない、その壮絶さが伺えます。 焼き上がった後も、窯が自然に冷めるまで何日もじっくりと待ち、ようやく器が取り出されるため、火を入れてから窯を開けるまで優に一週間以上かかるそうです。 こうした丁寧な手順を経て生まれる白磁には、量産品の真っ白な磁器にはない、独特の柔らかな白さと手仕事ならではの気配が宿っています。 ■ 国内外の料理人を魅了する、引き立てる力 この「料理が主役になる」実直な佇まいは、ご家庭の食卓だけでなく、国内外の目の肥えたトップシェフや名だたるレストランからも高く評価され、実際に広く愛用されています。 プロの料理人が信頼を寄せるのは、器自体が主張しすぎず、盛り付けた料理の色彩や瑞々しさを静かに受け止める度量があるから。 日常の何気ないおかずや、毎日のお茶碗のご飯を盛ったときにも、その引き立てる力をきっと実感していただけるはずです。 ...
「作家ものの器」に興味はあっても、最初はどこから選べば良いか迷う方も多いのではないでしょうか。少し敷居が高く感じられるかもしれませんが、日常の生活に実直に寄り添う、手頃な価格帯の器も数多く存在します。 予算を抑えて作家ものデビューをしたい方向けに、毎日の食卓で最も活躍するおすすめの選び方をご紹介します。 ■ 毎日の食卓の真ん中に「お茶碗(飯碗)」 初めて迎える作家ものの器として、実は一番おすすめしたいのが「お茶碗」です。 朝昼晩と、私たちの暮らしの中で最も多く手に触れ、口に触れる道具。5,000円以下の予算があれば、量産品にはない、作家の「ろくろの手跡」や「釉薬の個体差」が残る表情豊かな一客に出会えます。 手に持ったときの驚くような軽さ、手のひらにすっと収まる絶妙なカーブ、そして高台(こうだい・底の支え部分)の美しい削り。毎日使うものだからこそ、少し良いものを選ぶ。それだけで、炊き立てのご飯の瑞々しさが引き立ち、日々の食事がほんの少し贅沢な時間に整います。 ■ 小さな世界に個性が宿る「豆皿・箸置き」 お茶碗と並んで手に取りやすいのが、やはり「豆皿」や「箸置き」です。 手のひらに載る小さな面積の中に、土の質感や釉薬の工夫など、作家の独自の感性がぎゅっと凝縮されています。 手頃な価格帯のものが多いため、まずはここから作家 器に触れてみるのも良い方法です。手持ちの食器の中に手仕事の豆皿を一つ加えるだけで、食卓全体の空気は静かに変わります。 ■ 食卓の印象を左右する「主役の平皿」 万能に使える五寸(約15cm)前後の平皿も、5,000円以下の予算で魅力的な器が見つかります。 手仕事ならではのわずかな歪みや、土の温もりが残る平皿は、いつもの家庭料理を美しく受け止めてくれます。取り皿として、あるいは副菜を盛る皿として、長く使い込むほどに愛着が増していく道具です。 高い敷居を感じる必要はありません。ご自身の予算に合わせて、直感で「心地よい」と感じる一客を選ぶことから、新しい出会いを愉しんでいただければ幸いです。...
画面越しに出会う器も素敵ですが、実店舗の扉を開け、そこに広がる空気感の中で出会う器には、また格別な喜びがあります。 今回は、オンラインショップだけではどうしてもお伝えしきれない、実店舗ならではの魅力と、私たちが大切にしているこだわりについてご紹介します。 ■ オンラインでは伝わりにくい、器の「質感」と「手触り」 器の本当の姿は、光の当たり方や、手のひらに包み込んだときの感触の中に隠れています。 ざらりとした土肌の逞しさ、なめらかな釉薬の冷たさ、そして見た目からは想像できないほどの絶妙な軽さや重み。これらはすべて、実際に触れてみて初めて身体に馴染むものです。 うつわ御結の店舗では、作家それぞれの個性が宿る器を、ご自身の「手」で確かめながら、じっくりとお選びいただけます。 ■ 実店舗の雰囲気と、スタッフのこだわり 私たちが空間づくりで大切にしているのは、器たちが最も健やかに、美しく見える環境です。 自然光が差し込む時間、照明が落とす影の陰影によって、器は時間ごとに異なる表情を見せてくれます。 また、店頭でお客さまとお話しするスタッフは、ただ器を販売するだけでなく、その器が生まれる背景や、作家の想い、そして日々の暮らしに馴染むお手入れ方法までを丁寧にお伝えしています。 「この器には、どんな料理が合うだろう」 そんな会話を交わしながら、道具としての器との向き合い方を一緒に見つけていける場所でありたいと考えています。 店頭では、オンラインショップに並ぶ作品はもちろん、一点ものの器や、実際に触れてその「ゆらぎ」を感じていただきたい個性豊かな器を揃えています。 日々の食卓を想像しながら、手に収まるしっくり感をぜひ体験しにいらしてください。 器は、使う人の手に触れ、時間を重ねることで完成していきます。 オンラインでの出会いも、店舗での直感的な出会いも、どちらも大切なご縁です。...
日々の食事を整える際、和食器の組み合わせに迷うという声を伺います。 色や形、質感が異なる器をどのように並べるか。 日常の食卓を心地よく整えるための、基本的な考え方を記します。 ■ 色の組み合わせと、高さの出し方 和のテーブルコーディネートにおいて、器の色が重なることで視覚的なリズムが生まれます。 すべてを同じ質感や色、形、シリーズで揃えるのではなく、磁器の白に陶器の土色を合わせる。あるいは、同系色の中で質感の異なるものを混ぜることで、食卓に奥行きが生まれます。 また、平皿ばかりが並ぶ食卓に、少し高さのある小鉢や、高台の器を一つ加えることも有効です。 高低差が出ることで空間に余白が生まれ、盛り付けた器の表情がより引き立ちます。 ■ 季節感を演出する、素材の選び方 和食には、季節の気配を取り入れる楽しみがあります。 器においては、光を通す薄手の磁器やガラスの器は涼やかさを、厚みのある陶器や灰釉(かいゆう)の器は温もりを感じさせます。 旬の食材を載せる器の素材を意識するだけで、食卓の空気は静かに整います。 もちろん、盛り付けるものによっても、変化が楽しめます。 「合わせてみると、意外と合うな」という新しい発見もきっと見つかるはず。 難しく考えすぎず、手持ちの器との重なりを楽しんでいただければ幸いです。 ...
円い皿が並ぶ食卓に、ひとつ。 四角い器が加わるだけで、空間には心地よい緊張感と、美しい「余白」が生まれます。 今回は、焼き魚や前菜の盛り合わせなど、日常の風景を少しだけ特別にする角皿・長角皿の選び方をご提案します。 ■ なぜ、角皿なのか 私たちの食卓には円い器が多くなりがちですが、角皿には「並べやすさ」と「納まりの良さ」という機能的な美しさがあります。 例えば、焼き魚。 尾頭付きの魚や切り身を一切れ。円い皿では持て余してしまう空間も、長角皿なら驚くほどしっくりと馴染みます。 少しずつおつまみを並べたり、前菜を盛り合わせたり。四角い形がガイドとなり、盛り付けを自然と整えてくれるのです。 また、四角い形には丸みのあるものを盛り付けることを意識すると、食卓にリズムを生んでくれます。 ■ 暮らしに馴染む、角皿の選び方 器を選ぶとき、大切にしたいのは「質感」と「サイズ」のバランスです。 焼き魚やおつまみには、土の質感を感じるものを 陶器のざらりとした肌合いは、料理の水分や油分を適度に受け止め、美味しく見せてくれます。 品良くまとめたい時は、磁器の白を すっきりとした磁器の角皿は、食卓に清潔感とモダンな印象を与えます。 【おすすめの角皿・長角皿】 刷毛目鮎皿(川淵直樹)...
伊賀の地で作陶を続ける作家、新 学(あたらし まなぶ)さん。その作品の根底にあるのは、古伊賀の精神を受け継ぎながらも、現代の食卓に静かな力強さを添える、実直な手仕事です。 今回は、土と火の対話から生まれる「灰釉(かいゆう)」と、深く鮮やかな「織部(おりべ)」の魅力をご紹介します。 ■ 土と灰が織りなす、自然な色合い 新 学さんの器を眺めていると、そこにはひとつとして同じ表情がないことに気づかされます。 力強い土の質感に、木を燃やして生まれた灰が降りかかり、窯の中で高温にさらされることで生まれる色彩。 それは、計算された美しさというよりも、土と火と灰が対話を重ねて生まれた「自然そのものの色」と言えるかもしれません。 緑がかった深い発色や、流れるような釉薬の景色は、食卓に奥行きを与えてくれます。 ■ 織部 ― 深い緑が引き締める、静かな対比 灰釉の柔らかな変化に対し、新さんの手がける「織部」は、キリリとした表情が魅力です。 深く、瑞々しい緑。その色が器の輪郭を際立たせ、食卓に心地よい緊張感と華やかさをもたらします。灰釉と織部、それぞれの器を並べて使うことで生まれる、土ものならではの豊かなコントラストも、新さんの器を揃える愉しみのひとつです。 ■...