南青山の店舗で荒賀文成(あらが ふみなり)さんの器を手に取ると、その独特な柔らかさに意識が向きます。荒賀さんが手がけるのは、日々の食卓に実直に寄り添う「粉引(こひき)」の器です。
■ 粉引という、育つ景色

荒賀さんの代名詞は、白い泥土を重ねて焼く粉引の仕事。 真っ白な磁器とは異なり、下地の土の色がうっすらと透け、鉄粉と呼ばれる小さな黒い点が顔を出します。
この「土の気配」が残る表情こそが、荒賀さんの器の魅力です。
荒賀さん自身、「粉引は使い込んで風合いが育った様子が美しい」と語られています。使い込むほどに色が馴染み、味わいが増していく。器を「育てる」という楽しみを、日々の食卓で感じさせてくれます。
■ 道具としての、軽やかな造形

ろくろで丁寧に引かれた薄く端正な造形は、実際に手に取ると驚くほど軽く、日々の献立を重苦しくなく受け止めてくれます。
作家もの 器は、飾るための美術品ではなく、日々使われるための実直な道具。 特別な料理を用意せずとも、その器があるだけで食卓の空気が落ち着く。 荒賀さんの仕事には、そんな実直な「用の美」が宿っています。
長く専門店の現場を見守ってきた私たちの背景も、こうした「実直な道具」としての器選びに繋がっています。
■ ご紹介した器
縁が少し立ち上がっており、どのような料理も受け止める一枚です。
花の形を模した、静かな存在感のある器。食卓に心地よいリズムを生みます。
食卓が、心地よいものでありますように。
うつわ御結