器の「景色」を読む | 釉薬が生む偶然の美しさ

器の「景色」を読む | 釉薬が生む偶然の美しさ

うつわの世界でよく耳にする「景色(けしき)」という言葉。 これは、焼き物の釉薬の表情や、ひび割れなどの美しさを表す専門用語です。

作家もののうつわは、同じ窯で焼かれた同じ種類の器であっても、決して一つとして同じものはありません。炎の温度や土の性質、その日の気候といった偶然が重なり合って生まれる一点ごとの表情。それこそが、うつわの「景色」です。

本日は、そんな器の景色を生み出す「釉薬の流れ」「貫入」「窯変」といった、手仕事ならではの魅力についてお伝えします。

 

■ 釉薬の流れ | 炎と重力が生み出す模様

 

うつわの表面を覆うガラス質の膜である「釉薬(ゆうやく)」。 焼成中に高温で溶けた釉薬が、うつわのカーブに沿って流れることで、色の濃淡や、ぽってりとした溜まりが生まれます。

きっちりと描かれた絵柄とは違い、土と炎、そして重力が生み出す自然な釉薬の流れは、とてもおおらかです。お料理をざっくりと盛り付けたとき、この釉薬の濃淡が食卓に温かな「余白」を生み出してくれます。

 

■ 貫入(かんにゅう) | 使い込むほどに育つ表情

 

陶器の表面に見られる、細かなヒビのような模様を「貫入」と呼びます。 これは器が割れているわけではなく、焼成時の土と釉薬の縮む割合の違いによって、表面のガラス質にのみ最初から入っている細かなヒビのことです。

とくに土ものの器は、この貫入に日々のお料理の色や茶渋が穏やかに馴染み、使い込むほどにしっとりとした風合いへと変化していきます。それは失敗ではなく、器がその家の道具として育っている証拠でもあります。

 

■ 窯変(ようへん) | 窯の中で起こる予期せぬ変化

 


窯の中で炎がどのように当たるか、灰がどのように降りかかるかによって、予期せぬ色や模様が器に現れることがあります。これを「窯変」と呼びます。

作家自身でさえ、窯を開けてみるまでどのような表情になるか完全には予測できません。だからこそ、一つひとつの器に作家のたしかな息遣いが宿り、一期一会の魅力を持っています。

作家ものの器と聞くと少し身構えてしまうかもしれませんが、決して飾るための美術品ではありません。 日々の食卓を支える実直な道具として、長く寄り添ってくれるものです。 ぜひ、ご自身の手元で使い込み、あなただけの「景色」へと育ててみてください。

食卓が、心地よいものでありますように。

うつわ御結

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