漢字に込められた意味。うつわの名前の読み解き方

漢字に込められた意味。うつわの名前の読み解き方

和食器を探していると、「絵蛇蝎唐津沓向付」のような、長く難しい漢字の名前を目にすることがあるかと思います。

「なんだか敷居が高そう……」と少し難しく感じてしまうかもしれませんが、実はこの名前、うつわの「技法(模様や釉薬)」「形」「用途」を組み合わせた、とても理にかなった説明書きなのです。

本日は、小島直喜さんの3つの向付(むこうづけ)を例に、漢字の奥に隠された技法や形の意味、そして歴史について紐解いていきます。

名前の意味を知ると、うつわの「景色」がもっと身近に、愛おしく見えてくるはずです。

 

■ 蛇蝎(だかつ)と、沓(くつ)の形 | 絵蛇蝎唐津沓向付

 

一見すると一番難読で、早口言葉のような「絵蛇蝎唐津沓向付(えだかつからつくつむこうづけ)」。

「蛇蝎(だかつ)」とは蛇やサソリという意味ですが、うつわの世界では、釉薬(ゆうやく)が窯の中で縮れてめくれ上がり、まるで蛇の鱗(うろこ)のような力強い模様になる技法のことを指します。炎と土が偶然生み出す、非常に野趣あふれる美しい景色です。

そして「沓(くつ)」は、昔の人が履いていた靴のこと。茶の湯の世界では、あえて完全な円形を崩し、少し歪んだ楕円形(沓形)にすることで「不完全の美」を表現しました。 食卓に丸いお皿が多い中、この沓形のうつわを一つ置くだけで、心地よいリズムと余白が生まれます。

秋のきのこと、菊の花のおひたしなど、鮮やかな黄色や紫の食材がよく映えるうつわです。

■ 山瀬(やませ)の土と、馬盥(ばだらい)の形 | 唐津山瀬馬盥向付

 

 

続いては「唐津山瀬馬盥向付(からつやませばだらいむこうづけ)」。

「山瀬」とは、唐津焼に使われる土の特定の産地のこと。きめ細かく、ほんのりとしたあたたかい色合いのしっとりとした風合いに焼き上がります。

「馬盥(ばだらい)」は、その名の通り、昔、馬を洗うために使われていた平らで浅い桶(たらい)の形に由来します。 底が平らでスッと立ち上がった形は、平目の薄造りに、すだちと紅葉おろしを添えて盛り付けるなど、たっぷりと余白を持たせた盛り付けに非常に適した実直な形です。

 

■ 粉引(こひき)と、四方(しほう)の形 | 絵粉引四方向付

 

最後は「絵粉引四方向付(えこひきしほうむこうづけ)」。

「粉引」とは、色のついた土の上に、白い泥(化粧土)をかけてから透明な釉薬を焼き付ける技法です。粉を引いたように白く柔らかい風合いになるのが特徴で、そこに模様(絵)が描かれています。

「四方(しほう)」は四角形のこと。丸みのあるやさしい四角形のうつわは、いつものお料理を盛るだけで、食卓の空気を凛と引き締めてくれます。

うつわの名前は、「どんな土で、どんな技法を使って、どんな形に仕上げたか」を真っ直ぐに伝えてくれる、作り手からのメッセージです。

私たちが届けたいのは、飾っておくための美術品ではありません。料理を載せて初めて完成する、実用性を追求した「道具」です。 歴史ある技法や形を受け継ぎながら、現代の食卓にスッと馴染む小島直喜さんのうつわ。ぜひ、その名前の意味に想いを馳せながら、一生をかけて使い倒せる「自分だけの一客」を気負わずに探してみてください。

食卓が、心地よいものでありますように。

うつわ御結

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