器のアレコレ

「作家」と「職人」

作家は素材の選定や調達からはじまり、デザイン成形釉掛け焼成まですべてを行なっています。

一方、職人と呼ばれるのは手仕事による量産型で注文通りに制作します。
規模は様々ですが窯元と言われる組織では、ろくろ師、絵付け師など分業制も多く、手仕事でありながら同じクオリティで生産されています。

また、窯元としての量産品(窯物)も出しながら、個人作家としても活動している方もいらっしゃいます。

作家物はサイズやカタチ、焼き色、歪み方などが一点ごとに異なります。作家による遊び心を加え、敢えて変えていることもあり、世界に一つだけの風合いを楽しむなら作家物、同じクオリティのものなら量産型という選び方ができます。

ピンホール


焼物の器には「ピンホール」と呼ばれる1ミリ程度のへこみがある場合もあります。
これは釉薬をかけたときに生地についた有機物が焼かれ、小さなへこみとなる現象です。
これも窯の中で起こり得る自然にできたデザインとして、意図的に表現する手段として用いることがあります。

目跡(めあと

器の中心部にかけて小さな跡がついています。
これは器を重ねて焼く際に、器同士がくっつかないように小さな耐火性の土を挟んで焼くことでできるもので目跡と呼びます。
この目跡は量産品では見られないものです。


鉄粉

まさに鉄が粉のように吹き出しているものです。
これは粘土や釉薬に含まれる鉄分が焼かれることで酸化し、表面に現れるものです。
量産品や白さにこだわるものでは粘土の時点で徹底的に精製して鉄分を除去したものを使います。
作家物の鉄粉が出ている器は、それ自体を土が生み出す風合い・質感を味わいとし、あえて鉄粉の出る土にこだわって使っています。

貫入(かんにゅう)

焼成時に起こる素地と釉薬の収縮率の違いによって生まれる、釉薬のガラス質のヒビが入ること貫入といいます。自然に生まれる貫入をデザインとして表現手法として用いることは多く、一つとして同じにはならない貫入は見どころのひとつです。

この他にも、釉薬が流れた跡や溜まり具合、濃淡、絵付けのかすれ、窯の中では火の当たり具合も温度も均一ではないため、焼ムラも出ます。
これは窯物であっても同様で、手仕事で行っている以上まったく同じものというのはありません。

購入後の注意点

購入したらやること

器には大きく分けて陶器と磁器のふたつがあります。簡単に言うと陶器は土、磁器は石を原料としています。土である陶器は吸水性があるため、水分や油分が染み込むと臭いやカビの原因となります。

陶器をお買い求めいただいたら、まず〈目止め〉をしてください。

目止めとは、陶器に無数にある小さな穴の表面をコーティングし、染みや汚れをある程度防ぐことができます。

鍋に米の研ぎ汁(もしくは小麦粉や片栗粉を入れた水)を器が隠れる程度入れ、中火でゆっくり温度を上げていきます。沸騰する手前で弱火にし、10分ほどしたら火を止め、そのまま半日ほど鍋が自然に冷めるまで置いておきます。

※火加減が強すぎると器の一部だけが高温となり、ヒビや割れなど破損する場合があります。

※急な冷却は器の破損につながります。

※複数の器を一度に目止めする場合は、器同士が直接ぶつからないよう器の間にキッチンペーパーなどを挟みます。

目止めをすることで、デンプン質が器の細かな間に入り、汚れが入り込むのを防ぎます。

電子レンジや食器洗浄機のご使用について

電子レンジ

基本的にあたため程度での使用であれば問題ない場合が多いですが、急激な温度変化は破損の原因になります。 但し、金彩や銀彩など金属の装飾を施したものは、火花が出ることがあるので使用しないでください。

食器洗浄機

電子レンジ同様に金属での装飾を施したものは剥がれる可能性があります。 食器洗浄機は水量の多いため、吸水性がある陶器は染み込みやすくなります。 染み込んだまま庫内の湿度や温度にさらされることで、臭いやカビの原因になります。 また、近くの器と庫内でぶつかることで破損の原因となる場合があります。



少し不便に感じるところもあるかもしれません。

しかし、お気に入りの器だからこそ、作り手が手間を惜しまず作ったように、大切に扱っていただけたらと思います。

使っていくうちに少しずつ色味が落ち着いてきたり、多少の傷や染みがつくこともあるでしょう。 私たちはそれを〈景色〉と呼んでいます。 そんな景色の変化を楽しみ、自分だけの器に育てていただければ幸いです。